自転車であの空まで
「じゃあーね、オルガ!また明日ね〜」
「おう、じゃあな」
バスケ部の練習が終わり、かなりハードな練習のあとのため、かなり体がダルイ。
だが、そんなダルイ体を強制的に動かせて、ヘトヘトになりながら、体育館を出た。
季節は秋・・・もうすぐ冬になりかけで、風は冷たくて、ブレザー1枚だと少し肌寒い。
「もうそろそろ、コートの出番かな」
そう思いながら、俺は後輩や先輩に挨拶した。
同期のやつはもうすでにほとんどいない。
「ったく・・・寒い・・・俺は冬が一番ダメだってーのに・・・」
ブルっと体を震わせて、大きなエナメルバッグを左肩にかけて、自転車置き場で向かった。
自転車置き場へは、わざわざグラウンドを通って行かなくちゃなんねえ。体育館からグラウンドはまあ
遠いのなんの・・・ヘトヘトの体じゃダルイっつーの。
エナメルバックの中には、水やら、スポーツドリンクがかなりの量で入っていたが、今はもうほとんど殻で
あとは、着替えやら、重たい教科書やら入りすぎて、いつも肩が痛い。
「あーくそ、重い!」
「あれ?オルガじゃん!」
「あん?なーんだ、クロトかよー」
「“なーんだ”ってなんだよ・・・」
突然、グラウンドから声がしたと思ったら、今日も未だに野球部の部活で残ってる
クロトがいた。オレンジの夕焼けと同じ色をした、赤い髪がやけに目立つな・・・。
「オルガ、部活終わったのか?」
「おう、おまえは、まだそうだな・・・」
「あたり〜・・・だって、来週の日曜日に練習試合するんだぜ?そんなの帰れるわけないさ〜」
「そっか、まあがんばれよ」
「うん、がんばるわ〜」
ニヒっと笑って、クロトはそのまま、練習に戻った。
来週練習試合か・・・大変だな、野球部も・・・っと他人事に思いながらも、俺も来週試合あるんだっけな・・・。
そう思いながら、ゆっくりと自転車置き場に向かった。
未だに、野球部の掛け声が、自転車置き場にまで響いていた。
「・・・おい、てめえ・・・んなところで何やってんだよ・・・」
「あ、オルガじゃん」
俺は、眉間に皺を寄せて、俺の自転車の前でダルそうにしゃがみこんでる
天然パーマの男を見下ろした。
「『あ、オルガじゃん』じゃねえよ・・・ってか、人の自転車の前でしゃがみこんでんじゃねえよ!
邪魔だ、シャニ!」
「うざー・・・乗せて帰れ〜」
「はぁ!?いやにきまってんだろうが!」
「いいじゃん。どーせ、彼女居ないんだしさ。誰も後ろなんか乗らないでしょ?」
「余計なお世話だ!!」
彼女につい最近フラれたから、その彼女のことは言うな!
マジ・・・辛い・・・。
「あー・・・わーったよ、うるせえな。じゃあ乗れよ」
「わーい、せんきゅ〜」
棒読みで、全然ありがたくも思っていないシャニを、このまま置き去りにして帰ろうかと思ったがやめた。
ハァっと膨大なため息をついた俺は、自転車を出し、そのままエナメルバックを鞄に入れて、シャニを後ろにのっけた。
シャニは後ろ向きに座った。
「オルガ、こぐの遅すぎ〜」
「うっせえよ、ったく・・・乗っけてもらってんのに、ちょっとはありがたいと思え」
「ん?思ってるよ」
「え?」
いきなり、シャニが何か言ったから、シャニの方へ向いたが、すぐにまた前を向いた。
シャニはそっと、俺の背中に自分の背中を合わせた。
小さな肩幅に、どことなく暖かい温もりが広がった。
「こうして、オルガと帰るのもとっても楽しいかも〜」
「そうか?」
「うん〜・・・」
ふふっと笑って、シャニは空を見上げた。
その姿に、ドキっと心臓が鳴った。なんだこれ??
「なんだ、これ?」
「何が?」
「・・・別に////」
何故か、顔が赤くなって、俺はコホンっと咳をした。
なんだ、このキモチ・・・初めてだ・・・。変なの・・・。
そう思いながら、ゆっくりと自転車をこいで、俺は夕闇の空を眺めた。
2006年 9月22日 Girl Cute
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