第六回 「新桃太郎伝説」 ハドソン スーパーファミコン RPGには三種類のものがあります。 作品中で主人公たちに多くのドラマが存在し、かつ主人公が会話に加わるもの。 これは小説などと同じく、プレイヤーはその世界を外から眺めることになります。 逆に主人公たちの描写はほとんどなく、全てはプレイヤーの想像力に任されているものもあります。 ドラゴンクエスト1〜3までがこんな感じで、仲間の武道家や賢者はどんな人物なのか 想像力を膨らませて創作された小説サイトなども多くある事でしょう。 そしてこの中間として、ストーリー性はあるものの主人公はほとんど会話に参加しない (その代わりに、仲間はよくしゃべるので人気が出ます)ものがあります。 これはストーリーの中の主人公=プレイヤーなのですが、 プレイヤーの感性と主人公の行動があまりに食い違う場合はストーリーを台無しにしてしまうという危険の代わりに 感情移入ができるストーリーであった場合は感動も倍増するものです。 「天外魔境U」などがその名作として名高い物です。 有名なシリーズのはずなのにマイナーな一品。 スーパーファミコンで発売された「桃太郎伝説2」のリメイク作品である「新桃太郎伝説」は 天外魔境Uに劣らぬ素晴らしいストーリーを楽しませてくれました。 敵である鬼族は、コミュニケーションの形が人とは似て異なります。 頑固一徹で融通が利かず、百万の言葉よりも一度の心を打つ体験を重んじる。 戦いを第一の文化とし、剣を交えなければ決して納得しようとしない。 彼らは純粋です。現在は弱肉強食の論理がまかり通っていますが、愚直なまでにそれに従います。 そして戦いを通じて納得してくれれば、決して裏切る事のない固い信頼を寄せてくれるのです。 鬼族を治める伐折羅王の三人の子供たちも、それぞれに純粋さゆえの強さと弱さを持っています。 戦う事しか教えられていないために人を疑う事を知らない武神ダイダ王子。 鬼族を陰で操る悪意に気付いていたために隠遁してしまったアジャセ王子。 蝶よ花よと大切に育てられたために我侭に育ってしまった末の妹、夜叉姫。 彼らを説得するのは言葉ではなく、信念を込めた桃太郎の剣。 戦いの中で流れる彼らの叫び、そして心が通じ合ったときの会話と友情…… その描き方の美しさは「文学作品を目指した」と作者が言うだけのものがありました。 戦闘バランスも非常に厳しいです。 「全ての雑魚敵に、ひとつずつ必殺技を」と作られた戦闘はドラクエUの倍くらいの難易度。 単なるレベル上げにも緊張感を欠く事がありません。いつ死ぬか分からないですから。 しかし、だからこそレベルが上がったとき、新しい町についたとき、ボス敵との戦闘に勝ったとき (より正確には、ダンジョンを抜けてボスにたどりついたとき)より感動が高まったものでした。 重厚なストーリーの悲劇を乗り越えて到達した最終地点、鬼が島の地下の三途の川を越えたそこは「地獄」。 大魔王の城でも魔界でも冥界でもなく、「地獄」です。 重苦しいBGM、処理落ちでもしているのか歩く速さまでゆっくりとなり、 そしてまさに地獄の難易度と言える雑魚敵の尋常ではない強さ。 しかし、そこには今までの戦いを通して心が通じ合ってくれた鬼たちとの再会も待っています。 要約すれば「Let's Fight!」でしかない口上を素晴らしい威厳と威圧感で述べる最強の鬼族、三千世界。 地獄の奥底の宮殿から出ずにいたため、真実を知らされずにただ悲しみを込めた戦いを桃太郎に挑む伐折羅王。 彼らを詭弁と誤報で惑わし、地獄の実権を握ってきた悪の根源カルラ。 彼らに対して、人間である金太郎、浦島太郎、スリの銀次らと 鬼族の夜叉姫、閻魔大王、阿修羅、風神、雷神たちでは当然投げかける言葉が違います。 桃太郎には台詞は用意されていません。その必要はないのです。 その頃には、コントローラーを握る手にプレイヤー自身が思いを込めているでしょうから。 厳しい道程を越えた達成感と、ストーリーに入りこむ感覚。ストーリーそのものも素晴らしい出来栄えでした。 スーパーファミコン最高のRPGのひとつとして賞賛される傑作です。 余談1 スーパーファミコンのソフトの書き換えができる「ニンテンドーパワー」で この新桃太郎伝説の書き換えができますが、8月末で終了してしまいます。 任天堂本社にカセットを送れば書き換えもしてくれるそうですが、 なんとなく「スーパーファミコンウォーズ」など、それでしか手に入らないゲームが手元に残り 新桃太郎伝説は手に入らなくなってしまうと言う気がします(汗) 余談2 徹底的に褒めちぎってきましたが、実はこのゲーム、操作性は最悪です。 ただウィンドウを開いて道具を使うだけでもストレスがたまります。 それ以外の部分は絶品なだけに非常に惜しいです。 雑魚との戦闘がきついので投げ出してしまう人もいるかもしれません。 桃太郎城に乗っての海での戦闘は、天外Uの同じシチュエーションとはあまりにも辛さが違います…… 余談3 プレイステーションで、桃太郎伝説1と2を合わせたリメイク版「桃太郎伝説」が出ましたが ストーリーも難易度も(楽過ぎる……)新桃太郎伝説とは比べ物になりません。 新桃太郎伝説をリメイクして、操作性を快適にすればよかったのに…… オススメ度:☆☆☆☆ 続編期待度:☆☆☆☆☆